密会は婚約指輪を外したあとで
「それにあいつ、ああ見えて一途だよ。だから紹介したつもりなんだけどな。深瀬、真面目な男がいいって言ってたし」
「一途……?」
そんな言葉が似合わないくらい、口が悪いのに?
私は眉をひそめて、さらには首を傾げてみせた。
「疑惑があるなら、本人に確かめてみたらどうだ? まあ、本当のことを言うかどうかは不明だけど、嘘をついているかどうかぐらいは女の勘でわかるだろ?」
「確かめる勇気がなくて困ってるんですが……」
真実を知りたいと思いながらも、事実から目をそむけていたいという気持ちもある。
「俺から聞いてやりたいところだけど。──次はいつ会えそうなんだ?」
「……今日、うまくいけば会えるかもしれません」
私はバッグからスマホを取り出し、『残業が入りそうなので、今日も一花のお迎え頼みます』というメールを読み返した。
すっかり一馬さんの下でバイト状態になってしまっている。
同じ家なのだから会う確率は高かった。
拓馬に会ったとき、どう切り出すか。
私は残りのランチを食べるのも忘れ、強く降り始めた雨を眺めていた。