密会は婚約指輪を外したあとで
けれど──何気なくこちらを振り返ったその顔は、若干雰囲気は似ていたものの、一目惚れの彼をだいぶ幼くした感じだった。
体つきが細身で、まだ未成年だと思われる。
髪の色は黒ではなく明るいブラウンだったし、スーツではなく白い薄手のジャケットにジーンズを合わせたカジュアルな格好だった。
がっかりした表情を隠さず彼の容姿をちらちら観察していると、すぐに気づかれたようで。
私と目が合い、ふわっと可愛らしく微笑まれた。
ホテルの従業員でもないのに、見知らぬ女へ、微笑みのサービス。
こんな愛想のいい男の子、自分の弟だったら絶対癒されるに違いない。