密会は婚約指輪を外したあとで

けれど──何気なくこちらを振り返ったその顔は、若干雰囲気は似ていたものの、一目惚れの彼をだいぶ幼くした感じだった。

体つきが細身で、まだ未成年だと思われる。

髪の色は黒ではなく明るいブラウンだったし、スーツではなく白い薄手のジャケットにジーンズを合わせたカジュアルな格好だった。



がっかりした表情を隠さず彼の容姿をちらちら観察していると、すぐに気づかれたようで。

私と目が合い、ふわっと可愛らしく微笑まれた。


ホテルの従業員でもないのに、見知らぬ女へ、微笑みのサービス。

こんな愛想のいい男の子、自分の弟だったら絶対癒されるに違いない。
< 16 / 253 >

この作品をシェア

pagetop