密会は婚約指輪を外したあとで
まだ高校生なのに、さりげない仕草の一つ一つに色気が溢れていた。

目を伏せたり、瞬きをしたりするだけでも見惚れてしまう。

もしかしたら、色気は3兄弟で一番かもしれない。将来が末恐ろしい。


「1回だけでいいんだ。そうしたら、辛いことも全て忘れられる気がする」


私を見つめる純粋な瞳に、みるみるうちに透明な液体が溜まっていく。

彼の切ない表情を見ると、断りの理由がどこかに消え去った。


「じゃあ……1回、だけだよ?」


傷ついた不安定な心を癒してあげたい一心で、私は目をつむる。

くちびるへの接触を覚悟した途端、ハルくんにつられたのか、私の瞳からも涙が溢れてきた。


「……ずるい。そのタイミングで涙見せるなんて」


頬に零れた涙を、ハルくんの白くて細い指が拭う。

そして再び彼の顔が近づき、息がかかる距離まで来たとき──

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