密会は婚約指輪を外したあとで
ヒールが沈み込むほど、ふかふかした薔薇色のカーペット。
その上で微笑んでいるのは、グリム童話から抜け出してきたお姫様のような、可憐な女の人だった。
難しく結い上げた髪の上には、宝石が散りばめられたティアラを乗せて。
レースとフリルがふんだんにあしらわれた、淡いピンクの花びらを思わせるドレスをまとっている。
メイクは艶やかな透明感のある桜色のくちびると、長い付け睫毛が印象的。
遠目からもわかるほど隙がなく作り込まれ、ドレスとお揃いでピンク系にまとまっていた。
披露宴がお開きになったらしく、会場を出て行くゲストたちを新郎新婦が出口で見送っている。
笑顔で一人一人に挨拶する幸せそうなその姿を、ロビーの柱の影から遠巻きに見つめ、私はうっとりとため息をついた。
私と結婚してくれる人なんていないかも。
マイナス思考にそう思いながらも。
いつか素敵な人が現れて、愛のこもったプロポーズをされることを密かに夢見ている。