密会は婚約指輪を外したあとで
◇
一馬さんとの、偽物の婚約関係は解消されたけれど、私はまた一花ちゃんの面倒を見ていた。
今度は本当に、彼との間には雇用関係しか存在しない。
私はただ、好きな人の家族が困っているなら少しでも手助けをしたい、その一心だった。
本来ならボランティアでもいいくらいなのに、一馬さんは断固として譲らなかった。
曇り空に覆われた憂鬱な日。
一馬さんの出勤中、一花ちゃんが熱を出したため私は保育園に呼ばれ、自宅に連れ帰ることになった。
長い距離を抱っこで運ぶのは辛かったため、タクシーで帰ることにする。
信号待ちのタクシーの車内で、私の肩にもたれる、ぐったりとした一花ちゃんが痛々しい。
窓の外へ目を向けると、噴水の公園が見えた。
そこへ、見覚えのある白いワンピース姿の女性がゆっくりと公園へ入って行く。
あれは渚さん……。
また拓馬と待ち合わせだろうか。
気になったものの、途中でタクシーを止めるわけにはいかず、私は一花ちゃんへ視線を戻した。
一馬さんとの、偽物の婚約関係は解消されたけれど、私はまた一花ちゃんの面倒を見ていた。
今度は本当に、彼との間には雇用関係しか存在しない。
私はただ、好きな人の家族が困っているなら少しでも手助けをしたい、その一心だった。
本来ならボランティアでもいいくらいなのに、一馬さんは断固として譲らなかった。
曇り空に覆われた憂鬱な日。
一馬さんの出勤中、一花ちゃんが熱を出したため私は保育園に呼ばれ、自宅に連れ帰ることになった。
長い距離を抱っこで運ぶのは辛かったため、タクシーで帰ることにする。
信号待ちのタクシーの車内で、私の肩にもたれる、ぐったりとした一花ちゃんが痛々しい。
窓の外へ目を向けると、噴水の公園が見えた。
そこへ、見覚えのある白いワンピース姿の女性がゆっくりと公園へ入って行く。
あれは渚さん……。
また拓馬と待ち合わせだろうか。
気になったものの、途中でタクシーを止めるわけにはいかず、私は一花ちゃんへ視線を戻した。