密会は婚約指輪を外したあとで
ソファの端に腰かけた楓さんの目をしっかり見て、私は訴える。
「何言ってるの? 貴女は一馬と付き合ってるんでしょう?」
気の強そうな冷たい目つきに怯みそうになったけれど、私は勇気を振り絞って話を続けた。
「私はもう婚約者ではなく、ただ雇われているだけなんです」
「──え?」
首を傾げ聞き返した楓さんは、落ち着きなく視線をさまよわせた。
どうやら一馬さんは、忙しいのか、きっかけがないのか、まだ元奥さんへ再プロポーズはしていないよう。
「婚約者というのも嘘だったんですけどね。楓さん、一馬さんに騙されているだけなんですよ。だいたい、私には他に好きな人がいるので。一馬さんと付き合うとか考えられません」
「好きな人……?」
まだ私の言葉が信じられないのか、楓さんは眉をひそめる。
「一馬さんの婚約者のふりをしているうちに、弟の拓馬さんのことを好きになってしまったんです」
本当は一馬さんに出会うより先に、拓馬に一目惚れしていたけれど。
「拓馬くんのことを?」
目を見開く楓さんにうなずき、私は苦笑いをする。
「全然、私の片思いなんですけどね」
「何言ってるの? 貴女は一馬と付き合ってるんでしょう?」
気の強そうな冷たい目つきに怯みそうになったけれど、私は勇気を振り絞って話を続けた。
「私はもう婚約者ではなく、ただ雇われているだけなんです」
「──え?」
首を傾げ聞き返した楓さんは、落ち着きなく視線をさまよわせた。
どうやら一馬さんは、忙しいのか、きっかけがないのか、まだ元奥さんへ再プロポーズはしていないよう。
「婚約者というのも嘘だったんですけどね。楓さん、一馬さんに騙されているだけなんですよ。だいたい、私には他に好きな人がいるので。一馬さんと付き合うとか考えられません」
「好きな人……?」
まだ私の言葉が信じられないのか、楓さんは眉をひそめる。
「一馬さんの婚約者のふりをしているうちに、弟の拓馬さんのことを好きになってしまったんです」
本当は一馬さんに出会うより先に、拓馬に一目惚れしていたけれど。
「拓馬くんのことを?」
目を見開く楓さんにうなずき、私は苦笑いをする。
「全然、私の片思いなんですけどね」