密会は婚約指輪を外したあとで
◇
TVの前のローテーブルに、生姜焼きやキャベツの千切り、海老のすり身汁を並べる。
拓馬は文句も言わず、全て完食してくれた。
「こんな風にただ、飯作ってもらえるだけで、何か幸せ」
食後のコーヒーを飲みながら拓馬は言った。
冷蔵庫に入っていた簡単な物だったけれど。そんな風に言ってもらえるのが私の幸せだ。
「そういえば、気のせいか?」
拓馬がふとつぶやく。
「奈雪の口から、好きって聞いたことがない気がする」
「……気のせいじゃない?」
そんな細かいことは気にしないタイプかと思っていたのに、私から『好き』と言っていないのが拓馬にばれていた。
勢いで抱きついたことはあったけれど。
確かに一度も言ったことはない。
私にとって、『好き』とはっきり自分の気持ちを言うのは、かなり勇気のいることだった。
「じゃあ、言ってくれるまで、奈雪には一切触れないことにする」
拓馬はどこか気だるげにコーヒーカップをテーブルへ置いた。
「ええっ? そんなぁ……」
同じ部屋にいるのに距離を置かれると、寂しくなってしまうもので。
なのに拓馬は平然と雑誌を読んだり、自分で淹れ直したコーヒーをブラックで飲んだりしている。
TVの前のローテーブルに、生姜焼きやキャベツの千切り、海老のすり身汁を並べる。
拓馬は文句も言わず、全て完食してくれた。
「こんな風にただ、飯作ってもらえるだけで、何か幸せ」
食後のコーヒーを飲みながら拓馬は言った。
冷蔵庫に入っていた簡単な物だったけれど。そんな風に言ってもらえるのが私の幸せだ。
「そういえば、気のせいか?」
拓馬がふとつぶやく。
「奈雪の口から、好きって聞いたことがない気がする」
「……気のせいじゃない?」
そんな細かいことは気にしないタイプかと思っていたのに、私から『好き』と言っていないのが拓馬にばれていた。
勢いで抱きついたことはあったけれど。
確かに一度も言ったことはない。
私にとって、『好き』とはっきり自分の気持ちを言うのは、かなり勇気のいることだった。
「じゃあ、言ってくれるまで、奈雪には一切触れないことにする」
拓馬はどこか気だるげにコーヒーカップをテーブルへ置いた。
「ええっ? そんなぁ……」
同じ部屋にいるのに距離を置かれると、寂しくなってしまうもので。
なのに拓馬は平然と雑誌を読んだり、自分で淹れ直したコーヒーをブラックで飲んだりしている。