密会は婚約指輪を外したあとで
「それとも──、やっぱり嫌か。子どもがいる男なんて」
どこか切なそうに笑うから、
「そんなこと……」と私は緩く首を振る。
「本当に? ありがとう、なゆちゃんは優しいな」
一馬さんは哀愁漂う表情から一転、目を輝かせて笑った。
「なゆちゃんて、小さい子の面倒は見たことある?」
「はい。姉の子どもがいるので、わりと慣れています」
「それならよかった。じゃあ、明日も家に来てくれるかな。実は俺、出張が入って。娘の面倒が見れなくて困ってるんだ」
「そうなんですか……。私にできることであれば、お手伝いします」
私はまた断り切れず、安請け合いをしてしまった。
「大丈夫、なゆちゃんならできるよ。一花と仲良くしてやって。まだ3歳だけど、オムツは取れてるし、ある程度一人でできるから。──頼んだよ」
ポン、と大きな手のひらで頭を撫でられ、何だかお兄ちゃんみたいだなと感じた。