密会は婚約指輪を外したあとで
無責任にも一花ちゃんの面倒を頼まれてしまった私は、証明写真を撮るため、ショッピングモールへ向かう途中で何度もため息をつく。
一馬さんは「拓馬から明日のこと聞いておいて」と言って仕事へ戻っていった。
結局、拓馬さんと会わないといけないらしい。
『愛人として、俺と付き合ってみる? 兄貴には内緒で』
艶のある声を思い返し、私の妄想がスタートする。
『今夜から愛人の契約結ぼうか』
──なんて、もしも今夜誘われたら。
私、ちゃんと断れるんだろうか。
遊ばれたらどうしよう。
平凡過ぎる私なんて、1回限りで捨てられる。
使い捨てには、なりたくないのに。