密会は婚約指輪を外したあとで
「何でもないよ、ちょっと考え事してただけ。拓馬は彼女とデート?」
「違うって。ペットと散歩だよ」
拓馬はちらりとこちらに目線をよこし、即座に否定してみせた。
私、いつからペットに?
「ふうん……。それにしては拓馬の好きそうな感じの子だよね」
渚さんという女の人は不思議な冗談を言って、私の全身をさらっと眺める。
こんな地味な私が、好みのわけがないのに。
私が他人事のように二人の会話を聞いていると、拓馬は呆れた目をして渚さんに言い返した。
「どこが? 俺はもっと化粧の濃いキレイ系が好みなんだけど」
「ええ? そうだったー?」
彼にはモデルみたいな華やかな人が似合うのは確実だけど。
目の前ではっきり“好みではない”と断言されて、密かに傷つく私。