密会は婚約指輪を外したあとで
◇
夕食の準備をしていたら、ハルくんが学校から帰ってきた。
「ハルおじたん、おかえりー」
「ただいま、一花」
制服姿の眩しいハルくんは姪っ子の頭を撫でてから、キッチンにいる私の方へ顔を向ける。
「なゆさん、一花を迎えに行ってくれたんだね。ありがとう」
私たちに向けられた笑顔は、全く邪気のないキラキラしたものなのに。
そんな彼に裏の顔がある事実なんて、信じたくはなかった。
「何作ってるの?」
私服に着替え終えたハルくんがキッチンへ現れ、私の隣に立った。
「リクエストに応えて、ハンバーグにするつもりだよ」
「ほんと? 楽しみ。僕も何か手伝うよ」
目を輝かせたハルくんは白いシャツを腕まくりし、手を洗う。