密会は婚約指輪を外したあとで
リビングで子ども番組に夢中になっている一花ちゃんを確認し、私は声をひそめてハルくんに問いただした。
「そういえば。この前私に嘘ついたでしょ」
「え、嘘なんてついたかな?」
彼は心当たりのない様子で小首を傾げた。
「お母さん、亡くなってなんかいないって拓馬が言ってたよ。私にも似てないって」
どこかでハルくんは、本当は純真な子だと願っていたのに、どうやら最初の印象とは違うらしい。
「あー、もうバレたの? ちょっと大げさに言った方が、なゆさん同情してくれると思ったんだよね」
悪びれなく、小さく舌を出したその顔も可愛くて、怒る気が失せる。
何だか、常にこの3兄弟に騙されている気がする。
私はようやく、彼らの本性に気づき始めたのだった。