密会は婚約指輪を外したあとで
◇
「何年ぶりだろう、手作りのハンバーグ食べたの。レトルトばっかりで飽きてたんだよね」
向かいの席に座っているハルくんが、湯気の立つ料理を見て感慨深げに言う。
彼の隣でフォークを片手にご飯を頬張る一花ちゃんも、美味しそうに食べてくれている。
一馬さんたちの分も用意してはいるけれど、二人が仕事から帰ってくる気配はない。
「お母さんとは時々会ったりするの?」
「僕の母さん?」
ためらいがちに訊いてみると、ハルくんは笑顔を消して訊き返した。
「全然会ってないよ。忙しい人だから」
「そっか……」
「いちかもママに会いたい」
フォークを置いた一花ちゃんが、ハルくんのシャツの袖を引く。
思えば、どちらの両親も離婚していて、父親の方に引き取られているんだ。
社会人になるまで両親に育てられた私には、彼らの気持ちはわからない。
「何年ぶりだろう、手作りのハンバーグ食べたの。レトルトばっかりで飽きてたんだよね」
向かいの席に座っているハルくんが、湯気の立つ料理を見て感慨深げに言う。
彼の隣でフォークを片手にご飯を頬張る一花ちゃんも、美味しそうに食べてくれている。
一馬さんたちの分も用意してはいるけれど、二人が仕事から帰ってくる気配はない。
「お母さんとは時々会ったりするの?」
「僕の母さん?」
ためらいがちに訊いてみると、ハルくんは笑顔を消して訊き返した。
「全然会ってないよ。忙しい人だから」
「そっか……」
「いちかもママに会いたい」
フォークを置いた一花ちゃんが、ハルくんのシャツの袖を引く。
思えば、どちらの両親も離婚していて、父親の方に引き取られているんだ。
社会人になるまで両親に育てられた私には、彼らの気持ちはわからない。