密会は婚約指輪を外したあとで
目を潤ませた一花ちゃんと視線の高さを合わせ、ハルくんは優しく目を細めた。


「きっと、もうすぐ会えるよ。一花はお手伝いできるようになったし、お絵描きも上手になったもんな。今度、ママの絵を描いて、ママに見せようか」

「うん。いちか、パパとママの絵、かくー」


ハルくんが自分のお皿からデザートの苺を分けてあげると、一花ちゃんは口元をほころばせて素直に喜んだ。




3人とも夕食を食べ終わり、後片付けを始めた頃、玄関の方で物音がした。

その音に敏感に反応した一花ちゃんがソファの上から立ち上がり、駆け足でリビングを出る。


「なゆさん、僕も手伝わせて」

「ありがとう」


二人で協力して食器洗いをしていると、一花ちゃんが拓馬とリビングに入ってきた。


「パパじゃなかったー」

「ごめんな」


眉を下げてがっかりする一花ちゃんの頭を撫で、苦笑いする拓馬。


「おかえり、拓兄。晩ご飯は?」
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