幼なじみじゃイヤなんだ。
たぶん


驚かせて


困らせて


泣かせてしまう


そんな気がする。




桜は俺のこと、幼なじみ以上に思ってはいない。



だから…





「桜、お前…」





ガチャッ


ドアが勢い良く開いた。





「ちょっと!!うるっさいわよ!!私は昨日まで残業残業残業休日出勤残業で!やっと今日は休みでゆっくり寝れるってのに!!さっきから騒いでんじゃないわよ…って……」






こっちを見る目が見開いて行く。





「……」


「おはよう藍ちゃん。あっ!シルクのパジャマ似合ってる。」





桜がベットから顔だけドアの方に向けて、にこやかに挨拶してる。




俺達はベットであの体勢のままだった。


桜がベットで寝ていて、手は握りあったまま、俺は少し屈んで桜を覗きこんでいる。




ことの成り行きをしらない姉貴からしたら、俺が桜を押し倒してるように見えても仕方のない体勢。






数秒の沈黙の後、姉貴が口を開いた。





「うん、おはよう…って、お邪魔しちゃったかな?うん。お邪魔したよね。…えっと、どうぞどうぞ気にせず続きをどうぞ…」





とか、言いながらも、姉貴は一向に部屋から出て行こうとはしない。





「違う!!違う!!勘違いするなよ!」





一番ややこしい奴に勘違いをされている。





「うんうん。分かった分かった。誰にも言わないし!ってか?コトの前なの?それとも…コトの後なの?あっ。やっだ!わたしったら。つい動揺して、ヤボなこと聞いちゃったぁ?」


「いやいやいやいや!だから、違う!!」





まずい!家族中にあること、ないこと、言いふらされる。





「藍ちゃん。今、流瑠と交渉中なんだよ。ね、流瑠!」



「交渉中?」





あー。9時までに行くか、10時までに行くか、の『交渉中』ね。

すっかり忘れてた。
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