幼なじみじゃイヤなんだ。
「……それってどういう意味?」


「え?どういう意味って?」





流瑠の手が私から離れていく。




充電中には見えなかった表情が今、はっきりと見えた。



湿った風が、心地悪く私達を包む…。









「あれ?2人揃って何してるの?」





そう声を掛けられて振り向くと、出先から帰って来た藍ちゃんが立っていた。






「何?空気悪くない?ケンカでもしてたの?」


「…そんなんじゃねぇよ」






そう言って流瑠が家の方に足を向けた。




「流瑠?」




さっきより沈んだ表情になっていた流瑠に恐る恐る声を掛ける。





「帰ろう桜。おじちゃんもおばちゃんも凄く心配してたから」





私の顔を見ないで流瑠がそう言った。






『相澤さんのお父さんやお母さんが流瑠くんに面倒見てって頼んでいるの?』





「…お父さん、お母さん…か」





胸が痛い。





「そうだよ、帰ろう。優しい藍ちゃんがケーキ買って来たからみんなでうちで食べよう。おじさん達に言ってから、うちにおいで桜ちゃん」


「ごめん、藍ちゃん、今日はいいや。疲れたし明日学校だからもう寝るね」


「え~そうなの?って!?桜ちゃんがケーキ食べないなんて!?大丈夫?熱?熱あるんじゃないの!!ねぇ、流瑠っ!」


「……」





ポツポツと雨が降り始めた。

きつくなった湿った匂いが、私の鼻の奥をツンとさせた。
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