幼なじみじゃイヤなんだ。

門を飛び出した時、まだ少し遠い所から「桜！」と呼ぶ声が聞こえた。





流瑠！




声の方に振り向く。


走って来る人影。





真っ暗な景色の中でもそのシルエットを見間違えるはずもない。


流瑠は私の前まで走って来た。


どこから走って来たの？





私の目の前に来た時には、流瑠の呼吸はかなり乱れていた。


その呼吸を整える様に膝に手を置き体を屈めて大きく息を吸い込む。


２．３回深呼吸してから私の顔を見上げて言った。





「ごめんな、桜。まだご飯食べてないんだろ？待っててくれてるって聞いたから……」





流瑠の顔を見た途端、心のもやが晴れていく。






大好きな声。

私を見つめる大きな目。

息をする度上下する肩。





走ったせいで乱れた前髪


少し熱くなった頬





そして、そのすべてが私の心音をおかしくさせる。





「ううん。私もね、今帰って来た所だから。そんなに待ってないよ。それより、今日は流瑠の好きな煮込みハンバーグだよ。早く食べよ」





そんな私の動揺を隠す様に、口は知らず知らずに早口になっていく。





「……」


「流瑠？どうしたの？早く食べようよ。冷めちゃうよ」


「…あ、うん」








…ねぇ、流瑠。