幼なじみじゃイヤなんだ。

「今日、俺、南高で試合した後、ボールを置きに学校帰ったんだ。もしかしたら桜いるかなって部室覗いたら『もうとっくに帰ったよ』って聞いたんだけど…」






そうだった。

上坂くんと勉強するって、言いたくなくて言わなかったんだった。




“そうそう!忘れてた!”とか言って、上坂くんと勉強していたことを普通に伝えれば良かったんだろうけれど、抱きしめられたシーンを思い出して言えなくなる。






「うん、ちょっと寄り道してた」






嘘を吐いた後ろめたさに、ちょっと視線が泳いでしまう。







「1人で?」


「…うん。本屋に行ったり、雑貨屋に行ったり、ちょっとブラブラして来たの。楽しかったよ。何にも買わなかったけどね…」


「へぇ、そうなんだ?」


「うん…」






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