幼なじみじゃイヤなんだ。
その声はびっくりするくらい小さかったけれど、雪見さんは今、確かに言った。




『ごめんなさい』





そう私に言ったことに、相当緊張しているのか、恥ずかしいのか、雪見さんは真っ赤になって黙っている。



1ヶ月前、流瑠と雪見さんの会話を立ち聞きした私は、その『ごめんなさい』の理由をすぐに理解出来た。





「文化祭の時、相澤さんに絡んで来た子達を、そうするように仕向けたのはあたしなの」


「うん」


「相澤さんが、『大石くんだけじゃなくて上坂くんのことも落として二股をかけようとしてるかもしれない』って2人のファンの子達に吹き込んだの」


「……」





あまりにも無理のある私のキャラ設定に驚いて、言葉も出ない。






「それから…」


「うん」


「あたしが大石くんのファンにイジメられてるって言ったのも全部嘘なの」


「……」


「相澤さんにヤキモチをやいて気付いたら、後先考えずあんなこと言ってた。あそこで大石くんが来たのは予想外だったけど、相澤さんが言った『ただの幼なじみ』って言葉は聞こえていたみたいだし、相澤さんは『一緒にいてあげれば』って言ってくれるし、いっそのことこれをチャンスにして近付けるかも!って思ったわ」


「…うん」


「まぁ、頭のいい大石くんはすぐに調べ上げて、次の日にはあたしの嘘に気付いたみたいだけどね」






マサくんに送ってもらったあの日の“ヤボ用”はこれだったんだ。






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