幼なじみじゃイヤなんだ。
少しの沈黙の後、





「桜、帰るぞ!」





流瑠がそう言って私の肩から手を下ろした。

ハッと我に帰る。





「う、うん。帰る!じゃぁね!上坂くん」





置いていかれてはいけないと、先に上坂くんに背を向けた、流瑠の左側に急いで並ぶ。

そんな私に向かって上坂くんが言った。





「前にも言ったけど、相澤さんに“彼氏”が出来るまで、僕はあきらめないよ」





『相澤さんと大石君が付き合ったらあきらめてあげるね。それまでは僕、あきらめないよ』






1ヶ月前に上坂くんが言った言葉を思い出す。



俯いて固まってしまっていると、私の右手を隣にある左手がギュッと握り締めた。





心臓が勢いよく跳ね上がった。




安心出来る大きな手を感じて、右側にいる流瑠を見上げる。


流瑠は、頭だけ振り返り、上坂くんに言った。






「悪いけど、今度会う時には、あきらめてもらうことになってるから」






どういう意味なんだろう?


訳が分からず、流瑠を見上げたまま固まる私。


その手を引っ張って、流瑠が歩を進め始めた。












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