幼なじみじゃイヤなんだ。
「本気で、あいつのこと好きになったんじゃないかと思ったよ」


「ち、違うよ!私は流瑠のことを好きになってたんだから!」





そう焦って言った私の頭を、流瑠は優しく撫でた。


私はその心地良さに酔いしれていたのに、
急に流瑠の両手が、私の頭をガシッと掴んで固定する。





「え!?な、何?流瑠?」




流瑠は少し目を細めて、イジワルを言う時の顔で呟いた。





「昔から、思ったことは、言わなくていいことまで口にしてしまう性格なのに、最近は、言葉をのみ込んでみたり、よそよそしくなったり、俺を遠ざけようとしたり、作り笑いばっかりしてみたり…」


「!?」


「かと思ったら、急に抱きついてきたりするし、たまらなくなって、抱き締め返そうと思った途端、『妹』だとか、『演奏会頑張るための充電』だとか言って、警笛鳴らされるし…」


「あ、えっ!?」


「あの時は本当にヤバかった…もう限界って、このまま抱き締めて想いぶつけて、それ以上にいろいろ仕出かしそうな自分との戦いだった」


「『仕出かす』って?何を?」






頭を固定されたまま質問した私に、流瑠は「さあね」と楽しげに首を傾げた。


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