幼なじみじゃイヤなんだ。

「上坂への嫉妬や焦りで、俺は桜の心の中を冷静に覗くことなんて出来なくなっていたんだ」





流瑠は、私の頭を掴んでいた手を放し、また真剣に話し出した。





「そんな時に、決定的なあの言い合いになって」





『俺が好きなのは桜じゃない』って『桜はただの幼なじみ』って、流瑠が言っているのを聞いてしまった日。


流瑠の部屋で、言い合いをした。





「あの日、桜と俺は完全に勘違いをしたんだよ」






勘違い?





「そう言えば雪見さんが、流瑠が言ったことには続きがあるって言ってた」





そう言った私に流瑠はフッと優しい笑顔を見せた。





「やっぱり桜は途中までしか聞いてなかったんだな?」


「う、うん。私が聞いたのは『桜はただの幼なじみ』までだよ」


「もう分かってるよな?それ嘘だからな」





流瑠は“鈍感前例”が多すぎる私を疑うように目を細めてから、あの時嘘をついた理由を教えてくれた。





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