先輩と私と彼と。
先輩。
高校ニ年生になってから一ヶ月がたった。
五月の風が窓際の席に座っている私に当たり、とても心地良い。
背中まで伸びた長い髪を、さらさらと揺らしていく。
今は退屈な古典の授業の真っ最中だ。
あくびをかみ殺し、頬杖をつきながら、ふと思いだす。
…この時間は高三が体育の授業をしている、はず。
軽く窓の外のグラウンドへ視線を落として…
見つけた。
サッカーボールを蹴っている瀬川先輩。
バスケ部なのにサッカーも上手いんだなあ…
自然と上がる口角を抑えつけて、私は黒板へ向き直り、授業をしっかり聞き直す…
フリをした。