先輩と私と彼と。
「ちょ……綾!」
みんながあたしの背中を叩く。
「すごいじゃん!瀬川先輩と喋れて!」
「しかもドーナツはんぶんこしちゃって!」
「いいなあ……」
みんな勝手にきゃーきゃーと騒いでいる。
「そういえば、瀬川先輩甘いもの好きって言ってたっけ」
柚希の言葉に
「よし、これから甘いもの持って来なさいよ!」
と、茉由。
「でも先輩が私の顔覚えてくれてたり……するわけないよね」
私の言葉にみんなは苦笑した。
空気を読まずに申し訳ない。
先輩は悪い人ではないけど。
人の顔を覚えるのは苦手なように見えるから。
「けど……、嬉しかった」
にこっと笑うと、みんなも微笑んだ。
こんなの、進歩とは呼べないものだと思う。
けど、素直に。純粋に。
彼の目に少しでも映れたことが。
嬉しかった。