One Night Lovers
 ドアノブに手を掛けたとき、後ろから腕を掴まれた。有無を言わせぬ力強さでケイゴが私を振り向かせたのだ。

 訳がわからないうちに私の唇にケイゴの唇が押し付けられていた。

 たぶん嫌なら避けることができたと思う。

 でもそうしなかったのは彼のキスが嫌いじゃなかったからだ。

 ケイゴのキスを黙って受け止めて、それから私は彼の部屋を出た。

 こんなふうに記憶に残るキスをするなんてずるいと思ったけど、それよりもなぜだかとても嬉しくて満たされた気持ちになっていた。

 スキップでもしたい気分だ。

 最初から割り切っていると最後もこんなふうにすっきりと終われるのかもしれない。ネネが一夜の恋に夢中になるのも少しわかる。

 だけどやっぱり私は誰とでも、というのは無理だ。

 ネネのように簡単には男性に好意を持てない。

 やはり一瞬であっても自分から好きになれる男は限られていると思った。
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