One Night Lovers
 温泉の後でネネと合流し、お互い申し合わせたように昨夜の話は一切しないまま、朝食を取りホテルを後にした。

 ただ帰りの新幹線の中でネネが一言だけ私に訊ねてきた。


「ねぇ、この旅行中なんかいいことあった?」


 ためらわずに私は大きく頷いた。


「うん」

「そっかぁ! よかった。やっぱりあのオバさんの占い、当たったね」


 それには頷くことができないでいた。

 考えてみれば占い師の予言は当たったのかもしれない。でも私が信じたかったのはこんな結末じゃない。こんな恋に似た贋物なんか予言されても迷惑なだけだ。


 占いなんて聞かなきゃよかった。


 旅の終わりにしみじみとそう思った。
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