One Night Lovers
 たどり着いた避暑地は、涼を求める人々で賑わっていた。

 ホテルは予約したものの、大した計画も立てずにふらりとやって来てしまったので、私とネネはガイドブックを頼りにまず遊園地へ向かった。 

 バスに乗り換え一直線に山を目指す。

 到着したレジャーランドでは色とりどりの花が咲き誇り、木々が濃緑の葉を揺らすと柔らかで心地よい風が辺りを吹き抜ける。

 これが都心と同じ太陽か、と思うほどに降り注ぐ陽光は穏やかだ。


「ルリ、ここに来て急に顔色よくなったね」


 ネネが私の顔をまじまじと見つめてくる。

 確かにここに着くまでの間、黙っていれば無意識に別れた彼のことを考えていた。

 別れた当日から少しずつその時間は短くなっているものの、彼をすっかり忘れてしまうにはもっと膨大な時間が必要らしい。

 でも乾いた都心を離れ、自然に包まれて新鮮な空気を吸うと、鬱屈した気分も晴れやかになる。

 深呼吸をするたびにどんどん心が癒されていくような気がした。


「これでいい男がいれば完璧なんだけど」


 早速ネネは額に手をかざして周囲を見回し、いい男を探すジェスチャーをする。


「そんな簡単にいい男が見つかるはずないって」

「いや、ルリの行くところにいい男が絶対現れる! あのオバさんの占い、当たるって有名だし」
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