One Night Lovers
 日常に舞い戻った私は、静かで穏やかな毎日を繰り返していた。

 相変わらずネネは私を夜の遊びに連れ出してくれたけど、酔っ払うほど飲むこともせず、適当に切り上げて遅くとも終電で帰る。

 別にいい子ぶっているわけじゃない。

 毎回いい男はいないかと期待して出かけていくのだけど、そういう相手には全く巡り合わないだけだ。

 ふとしたときにケイゴを初めて見た瞬間のことを思い出す。

 あれはない、と思ったのは自分自身に大嘘をついていたのだな、と今は思う。

 たぶん最初から彼のことが気になって仕方なかったのだ。素直じゃない自分に苦笑いしたくなる。

 どうしたらまた「この人だ」と思う人に出会えるのだろう。

 そんなことを考えながら毎日を過ごす。

 虚しい日々だけど、元彼に振られた直後のよう自堕落に過ごしているわけではない。

 時間がたくさんあるのでショッピングにも十分時間を費やせたし、伸び放題だった髪の毛もカットとカラーリングを施してリセットし、メイクも今までとは変えてみた。

 いつもどこかで誰かに見られているような意識が私の中に芽生えたのだ。


「ルリ、好きな人でもできた?」


 ネネが隣の席からこっそり訊ねてきた。
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