One Night Lovers
「嫌だなぁ、とぼけちゃって。今、めちゃくちゃ動揺してるくせに」


 フフンと鼻を天井に向けるとネネは眉を「どうだ」と言わんばかりに上げて見せた。


「まさか! あんな金髪男、今まで綺麗さっぱり忘れてました」


 言いながら、完全に負けたと思う。ネネは全く表情を変えずに小刻みに頷いた。


「そう言いつつ、こっそり連絡取ったりしてるんでしょ」

「いや……それはない」


 これは本当のことだった。声が自然にトーンダウンする。


「えー、ちょっと意外。二人ともすごく意識してるっぽかったから、こりゃ絶対付き合うなって思ってたのに」


 ネネは腕組みして考えるようなポーズになった。


「それはないよ。連絡先教えなかったし」

「はぁ!? どうして? 聞かれたでしょ?」


 仕事中ということなどすっかり忘れた様子でネネは大声を上げる。


「うん、まぁ。でも彼女いるって言ってたし」

「ウソ!? トシくんはケイゴくんも彼女いないって言ってたよ」


 小声に戻ったものの興奮気味のネネとは逆に、私は冷静さを取り戻していた。


「でも本人が『彼女みたいな』人がいるって言ってんだから、いるんでしょ」


 他人事のように言い捨てる。実際他人事だ。ケイゴに彼女がいることと、私とは何の関係もない。
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