One Night Lovers
 それでもネネは納得しなかった。


「おっかしいなぁ……」

「何が?」

「なんか変。なんか引っかかる。それにルリもルリだよ。彼女いてもメアドくらい教えたらよかったのに」


 ネネなら絶対教えただろう。私だって一瞬迷った。

 だけどこれ以上ケイゴと何が期待できるというのだろう。

 彼女からケイゴを奪ってまで彼と幸せになりたいとは思えない。

 たぶん私はケイゴをそこまで好きではないのだ。


「ケイゴだってあっさり引き下がったし、別に私なんかどうでもよかったんだと思うよ」


 そう言いながら、だけどあのキスは何の意味があったんだろう、と自問していた。

 あれは連絡先を教えないと言った直後の出来事だった。

 私のことはどうでもよくてもキスをしたのだろうか。

 こんなことを考える私は、最後のキスに意味があると信じたいらしい。

 もしあったとしても、結局どうにもならないのだと知ってはいるのだけど……。
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