One Night Lovers
 シンジは真面目な好青年といった感じで他には際立った特徴はない。

 顔は悪くないが、どこにでもいる若いサラリーマンだと思う。

 ネネが言うようにいい男の部類に入ることは認めるが、好きになれるかどうかと考えるといまいちピンと来なかった。

 シンジを見てトシユキのことを思い出す。

 もしあの晩ネネがケイゴを落としていたら、私はトシユキとどうにかなっていたのだろうか。

 何だか想像するだけでも変な気分だ。


「トシには悪いけど、俺はルリが欲しい」


 ケイゴの掠れた声が耳の奥で鮮明によみがえる。

 胸の奥が鈍く痛んだ。

 たぶん私はずっと後悔しているのだと思う。

 あの晩、軽はずみでケイゴの部屋に行ったのだから、メアドくらい気軽に教えればよかったのだ。

 そうすれば今頃になってたった一夜の思い出に縋るような惨めな自分はいなかったかもれしない。

 とりあえずシンジに返事をしなくてはならない。

 パソコンの前でぼんやりしていると、遅れて戻ってきたネネが「ねぇ」と声を掛けてきた。


「ルリさ、やっぱりまだ気になってるんでしょ?」

「何が?」

「ケイゴくん」


 私はネネの顔を正面から見た。ネネは困ったように眉根を寄せる。
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