One Night Lovers
 シンジから浮き足立ったメールが届き、1週間後の夜に食事をすることになった。

 始まるときは簡単に始まるのだな、とシンジとの約束に関しては冷めた気持ちでいるが、全然期待していないわけでもない。

 これが上手く行って結婚に結びつけば、ほぼ人生は安泰じゃないかと目算している自分もいる。

 何しろシンジはアメリカに2年ほど研修に行っていたのだ。それはウチの会社では重役コースへの最短路線でもある。


 約束の当日、私は珍しくワンピースを着て、ネックレスやらブレスレットやらで無意味に自分を飾り、待ち合わせ場所の隣にある百貨店のトイレでメイクを直し、シンジを待ち構えていた。

 これは本当にデートのようだ、とぼんやり突っ立ったまま思う。

 シンジは時間通りにやって来て、予約していたフレンチレストランへ向かった。

 小洒落ているが落ち着く店で、案外センスがいいのかな、などと思う。

 アメリカ研修中のことなどを面白おかしく話すシンジは、見た目と同様、中身も真面目で好青年のようだ。

 一緒にいても気詰まりな感じはないし、まぁこれはこれでアリかな、と食事が終わる頃には思っていた。

 店を出て、シンジは「明日も仕事なので今夜はこれでお開きにしましょう」などと優等生らしいセリフを言った。

 私も異存はないので頷く。シンジと並んで駅へと足を向けた。
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