One Night Lovers
「どうしたの?」


 やっと我に返ったものの、それでも画面から目が離せないでいる。

 遠くからこちらへ近づいてきた男は、私の期待を裏切らず、私の知っている男に間違いない。


 どうしてケイゴがテレビに映っているのだろう。

 しかもこのドラマはカジケンが主演のドラマだったはずだ。

 これは一体どういうことなのか?


 頭の中は激しく混乱していた。

 それでもシンジに悟られないよう表面は何とか取り繕う。


「あ、えっと、なんかこの場面、デジャヴュっていうの? 前に見たことがある気がしたんだけど、気のせいだった」

「そうなんだ。じゃあ行こうか」


 歩き出そうとするシンジを見ようともせず、私は静かに言った。


「ごめん。私、このドラマ、見逃したくないから先に帰って」

「録画してないの?」

「うん。忘れてた」


 言いながら、やはりこのドラマを録画予約しておけばよかったな、と先週のことを激しく後悔する。

 シンジが歩き去るのを感じたが、それでも私の視線は画面に釘付けになっていた。
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