One Night Lovers
「ごめん、騙すつもりじゃなかった」

「はい? 騙す気がなくてウソを言うなんておかしい。矛盾してる。それになんでこんなところにケイゴがいるの!?」


 やっと涙は止まり、だんだんいつもの調子が戻ってきた。

 それをケイゴは嬉しそうな顔で受け止めてくれる。


「ルリを探してた」

「おい、ルリは今、俺とデート中なんだよ!」


 隣の男がケイゴに挑むように一歩前に出た。

 そういえばそうだった。ケイゴを見た瞬間からすっかり忘れていた。


「でもルリは嫌がってた」

「それは……」


 シンジが口ごもった隙に、ケイゴは辺りを見回す。

 人通りの多い通路に立ち止まっている私たちはかなり邪魔モノだったが、それ以外にも遠巻きにこちらを注視している女性の姿などが見え始めた。


「そろそろタイムリミットかな」


 言うなりケイゴは私の手を取って、シンジに笑いかける。
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