One Night Lovers
「悪いけど、ルリは俺がもらうから」
「ちょっ、待っ……!」
シンジの返事など待たずにケイゴは身を翻し、私の手を引っ張って走り出した。
あのふらふら歩いていた金髪男と同じ人間とは思えない身のこなしで、あれも演技だったと今更気がつく。
騙すつもりはないなんてやっぱり大ウソだ。最初から騙すつもりだったくせに、と心の中で叫んだ。
「どこに行くの?」
息を切らしながらケイゴに訊ねる。
すると肩越しに振り返った彼は、私の顔を見て少し速度を落とした。
「家まで送る? それとも……」
ケイゴは意外にも足が速かった。
それに合わせて走るだけでも心臓はバクバク言っているのに、次の言葉を待つ間の胸の苦しさといったら悲鳴を上げたくなるほどだ。
「俺の家に来る?」
期待通りのセリフなのに、嬉しくて嬉しくて思わずケイゴの腕にしがみつく。
だけどすぐに「うん」とは言わない。
「どうしよう。明日仕事あるし……」
早足で歩くケイゴはショッピングモールを出て駐車場に向かった。
「大丈夫」
「何が大丈夫なの?」
「とにかく乗って」
目の前には真っ赤なコンパクトカーがあった。
ボディはピカピカに輝き、まさに新車だ。
言われるままに助手席に乗り込む。中は新しい車のにおいがこもっていた。
「ちょっ、待っ……!」
シンジの返事など待たずにケイゴは身を翻し、私の手を引っ張って走り出した。
あのふらふら歩いていた金髪男と同じ人間とは思えない身のこなしで、あれも演技だったと今更気がつく。
騙すつもりはないなんてやっぱり大ウソだ。最初から騙すつもりだったくせに、と心の中で叫んだ。
「どこに行くの?」
息を切らしながらケイゴに訊ねる。
すると肩越しに振り返った彼は、私の顔を見て少し速度を落とした。
「家まで送る? それとも……」
ケイゴは意外にも足が速かった。
それに合わせて走るだけでも心臓はバクバク言っているのに、次の言葉を待つ間の胸の苦しさといったら悲鳴を上げたくなるほどだ。
「俺の家に来る?」
期待通りのセリフなのに、嬉しくて嬉しくて思わずケイゴの腕にしがみつく。
だけどすぐに「うん」とは言わない。
「どうしよう。明日仕事あるし……」
早足で歩くケイゴはショッピングモールを出て駐車場に向かった。
「大丈夫」
「何が大丈夫なの?」
「とにかく乗って」
目の前には真っ赤なコンパクトカーがあった。
ボディはピカピカに輝き、まさに新車だ。
言われるままに助手席に乗り込む。中は新しい車のにおいがこもっていた。