One Night Lovers
「新車でしょ? 車、買ったの?」

「うん。今日納車だった」


 どおりで、と頷きながら運転席のケイゴを見ると、サングラスを外している。


「これさ、暗くなってから、しかも人を探すときにはホントに不便だよね」

「そりゃそうでしょ」


 感慨深げに言うケイゴの様子に思わず吹き出してしまう。

 するとケイゴに睨まれた。


「あんなところでキスするほうもどうかと思うけど、されるほうもどうかと思うよね」

「み、見てた!?」


 そういえばさっき「俺以外の男とキスするな」と言われたが、誰もいないと思ったのにどこからか目撃されていたらしい。

 こともあろうに、一番見られたくなかった彼に……。


「しかもその後、ルリは逃げ足が速くて、何度見失ったことか」

「そんなこと言ったって、ケイゴがここにいるなんて知らないし。……っていうか、なんでここにいるの?」


 見覚えのある黒縁眼鏡にかけ直したケイゴは、静かに車を発進させた。


「ルリを探してた」


 それもさっき聞いたセリフだった。

 だけどどうして私がここにいると知っていたのだろう。

 不思議そうに首を傾げたのを、ケイゴがちらっと横目で見た。


「トシから連絡来て、ネネちゃんからのメールを転送してもらった」


 なるほど。ネネ経由なら今日のデートの行き先まで知っているのは当然だ。
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