One Night Lovers
「え? 引っ越したばかり?」

「うん。昨日引っ越したばかりだね」


 唖然とする私の顔を見て、ケイゴは嬉しそうに笑った。


「働いた分の金が入ったし、これで人並みの生活ができるなって思うんだけど、どうかな?」

「どうかなって言われても……。一体、前はどんな暮らしをしてたの?」


 困惑しながら言うと、大きなため息が返ってくる。


「とてもルリには見せられない。会ってすぐ思ったけど、ルリは『ちゃんとした』男が好きでしょ?」

「そりゃ『ちゃんとしてない』よりは、ね」


 うんうんと頷いたケイゴは、急に「こっちがキッチンで、こっちが浴室で」と室内を案内し始めた。

 戸惑いながらその後につき従い、一通り部屋の中を見て回った。

 独り暮らしにしてはずいぶん余裕のある部屋だな、というのが素直な感想だ。


「どうかな?」

「いや、だから、どうって言われても……」


 ニコニコしながら返事を期待する目で見つめられているのだけど、ケイゴが何を言いたいのかよくわからない。

 部屋を褒めてほしいのだろうか。


「いい部屋だね」


 ケイゴは嬉しそうにうんうんと頷く。
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