One Night Lovers
 え?

 ということは、ケイゴに彼女はいなかった……?


 あの曖昧な言い方は彼の引け目のせいだったのか、と思うと何だか脱力してしまい、その場にへなへなと座り込んだ。

 私があんな恥ずかしいことを言ったり、悲しく切ない気持ちになったのは一体なんだったのか。

 しかも最近の私なんか録画した彼を見ないと生きていけない身体になっちゃってどうしてくれるんだ。

 何もかも全部ケイゴのせいだ。


「大ウソつき!」

「ウソつきは嫌い?」


 ケイゴがしゃがんで私に目線を合わせてきた。

 微笑んでいるけど、不安そうに瞳が揺れる。ダテ眼鏡が邪魔だ。


「嫌い……だけど、好き!」


 えい、と黒縁眼鏡を勝手に外してびっくりした顔のケイゴに自分からキスをする。

 キスするならやっぱり彼の唇がいい。

 久しぶりのキスはこんなに長くキスしていられるんだ、と自分でも感心するくらい長い時間お互いの唇を確かめ合っていた。
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