One Night Lovers
 聞きながら、だんだん笑うしかないという心境になった。

 そんなことは露知らず、私はアホのように毎日録画したケイゴを眺めて生活していたのだ。


「しっかし、カジケンってマジでイケメンでムカつく。俺がここまで他人に憎しみを抱いたのは初めてだね。しかもルリの元彼っていうのが許せない。いつか絶対、カジケンを越えてやる」


 怒ったように言ってもケイゴは全然怖くない。

 それでも宥めるように背中を撫でた。


「でももし人気出ちゃったら、寂しいかも」


 冗談っぽく笑いながら言ったけど、実はこれが本音だった。

 カジケンなんかどうでもいい。

 勿論私だってケイゴを応援しているけれども、できれば人気はほどほどでいいと思っている。

 じゃないとまたカジケンと同じように、そのうちケイゴにも捨てられるかもしれない。


「俺はカジケンとは違うよ」


 私の顔を覗き込むようにしてケイゴが言った。


「忙しくて会えないとか、そんなの俺も嫌だし、そういうこと言いたくない。だから、さっき言ったのは冗談じゃないんだ。本気で考えてほしい」


 真剣な表情でそれが冗談じゃないことは痛いほど伝わってくる。

 だけど全部があまりにも突然すぎて、これが現実のことなのかどうかさえ疑わしい。

 とりあえず、頬をつねってみた。
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