One Night Lovers
「いたっ!」

「何やってんの?」

「これが夢だったら嫌だなと思って」


 いきなりケイゴが私に頬をこすりつけてきた。


「ルリ、マジでかわいい。もう一回言っていい?」

 何を?

 ドキドキしながらケイゴの目を見た。真面目な顔をした彼から目が離せなくなる。


「俺はルリが欲しい」


 胸がいっぱいになって、涙がこみ上げてきた。


「これからずっと俺の恋人でいてくれませんか?」

「……よろこんで!」


 歓喜の嵐が二人を静かに包んで、ただ抱き合っているだけで幸せな気持ちがお互いの身体中からあふれてきそうだ。


「だけど、ルリもウソつきだよね」


 喜びに浸っていると笑いながらケイゴがそう言い出した。


「私のどこが?」


 ウソなんかついた記憶がない。

 思い切り凄んで見せたが、ケイゴは涼しい顔だ。

 それからクスッと笑って、急に鬼の首を取ったような表情をした。
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