One Night Lovers
 まるで私が悪い女のように言うケイゴにカチンときた。

 シンジに妬いてくれるのは嬉しいけど、そもそもケイゴが妙なウソをつくから、まわりまわって私がシンジにキスされる羽目になったのだ。

 ふくれ面でそっぽを向くと、機嫌を取るような声がしてくる。


「わかった。もう言わない。その代わり……」


 彼の手が私の顎にかけられる。


「これからはここで毎日俺を見て生活すること」

「……うん」


 そういえば今夜はドラマの最終回の日だったな、とケイゴのキスを受け止めながらぼんやり思う。

 そう思うと急に演技しているケイゴの姿が見たくなった。

 いつ私のことを考えてくれていたんだろう。確かめるためにももう一度最初から見直さなくちゃ。


 そのうちケイゴの手が下着の隙間を探り当てて忍び込んでくる。

 触れられるのは嬉しいが、急に部屋の中に無造作に置かれたダンボールの箱が気になった。


「……ねぇ、荷解きとか、しないと……ダメなんじゃ……」

「そんなの後でいいよ」


 切羽詰ったような表情のケイゴが私を床の上に押し倒し、首筋にキスを落とす。

 甘い痺れが身体中を駆け抜けていくのをうっとりと感じる。


「酔っ払って素直になったルリもすごくかわいいけど、やっぱり俺はちょっとプライドが高くて全然素直じゃないルリが好きだな」


 器用な手つきで下着の中に指を滑り込ませながら、ケイゴは掠れた声で言った。

 私の身体はもう熱し始め、彼の動きによって生み出される快感を余すところなく貪欲に感じ取ろうとする。
< 70 / 72 >

この作品をシェア

pagetop