One Night Lovers
 なぜだかふと、占いのことを思い出した。


「ねぇ、占いって信じる?」

「どうかな。そういうものを頼るのは迷ってるときだからね」

「ああ、そうかも」


 ケイゴの意見が意外だったが、私はあのとき占い師を胡散臭いと思いつつも、失恋のせいで自分では見えなくなってしまった未来に一筋の光でも見出してほしいと切望していたのだ。

 なんだ、そうか。そんなことだったんだ。

 この世で一番わけのわからないものは自分かもしれない。


「俺は自分に都合のいい部分だけ信じる」


 クスクス笑いながらケイゴが私の敏感な部分をゆっくりと撫でる。

 軽く触れただけなのに強い刺激が足裏にまで走り、切ない悲鳴を上げてしまった。

 まるで自分の声が自分のものじゃないように聞こえる。

 彼にもっと見つめられたくて、もっと愛されたくて悲鳴を上げている今の私は誰よりも素直で幸せモノだと思う。


「でもケイゴも……どうせならもっと、マシなウソ……つけばよかったのに」


 荒い呼吸の合間にしゃべるのはとても辛いのだけど、彼の愚かなウソが愛しくてどうしてもそれを言いたくなった。

 すっかり美しいオスに変身したケイゴは性急な動作はそのままで少しだけ笑って見せる。
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