One Night Lovers
「だから騙すつもりじゃなかったし、そんな余裕なかった。ただルリが欲しくて……」


 甘く囁く声が私を溶かして潤す。

 身も心も愛される悦びに心が打ち震えた。

 一夜だけの恋なんかもうこりごりだ。

 明日も明後日もその先もずっと私を悦ばせてくれるのはケイゴじゃないと……。


「もう二度と離さない」


 酷く思い詰めた顔のケイゴが私の真上に来て言った。

 手を伸ばし、頬を包み込むようにそっと触れると、彼の表情がフッと緩んだ。

 できるなら私も、不器用だけど真っ直ぐな彼の生き方をずっと傍で見ていたい。

 ケイゴがゆっくりと動き出した。慌てて彼の腕に縋りつく。

 見た目の印象よりも案外筋肉質で、この腕に抱かれているとなぜかとても安らかな気持ちになる。

 乾いた都会の一室だというのに、私はなぜかあの夏の濃緑色に染まる避暑地の爽やかな空気を感じていた。

 燃え上がって消えてしまうはずの一夜の恋が、今夜から終わりのない恋になる。

 本当に未来のことなんか誰にもわからない。

 だけど、私が彼を求める熱はいつまでも冷めることはない。

 たとえ寒い冬の夜でも、彼が私の傍にいる限り、ずっとずっと永遠に――。
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