One Night Lovers
 まず目に飛び込んできたのは見事な金髪だった。ライオンの鬣(たてがみ)にそっくりだ。

 こんな髪型が許される職業なんて限られている。

 それになぜ金髪なのかがわからない。カラーリング技術は大幅に進歩し、色味だってたくさんある。

 あれが彼の趣味だというなら、私には彼のことを理解できそうにない。

 心の中に絶望のようなものが広がり、上げに上げていたテンションは瞬く間に急降下していった。

 軽薄な中身を象徴するかのように、金髪男はふらふらと軸のない足取りでこちらへ近づいてくる。

 がっかりしながらも私はその男を丹念に上から下まで観察していた。

 男二人が並ぶと、意外にもスラリと背の高いスポーツマン系の男性と金髪男はさほど変わらない背格好だ。


「自己紹介すると、俺がトシユキで、コイツはケイゴ」

「えっと、私がネネで、こちらはルリです。よろしくね」


 さすがにネネもケイゴと紹介された男にぎょっとしたようだが、気を取り直して愛想よく言った。

 私もネネと同じような表情をしながら、密かに金髪のケイゴが口を開く瞬間を期待する。
< 8 / 72 >

この作品をシェア

pagetop