神様のイジワル
*3(過去)
私が生まれて9ヶ月ほどして、本当の母親が家を出た。
その時私はすごく泣いていたらしい。
もう戻ってこない、と子供なりに確信していたのかもしれない。
その姿を見て、父は、この子を大切に育てなければ、と心に決めた。
それから半年ほど経って、父は再婚した。
父はこんな小さな私にはつらい話だろうから、と薬の力を借りて、記憶を操作し、この人が本当の母親だ、と認識させ、生みの親の存在を忘れさせた。
だから私は、今の今まで、ずーっと育ての親を本当の母だと思っていた。
だが、父が再婚してすぐ、1本の電話がかかってきた。
私の生みの親から…
今さらなんだ、と思い、父はとりあえず電話に出た。
『もしもし…?』
『………あなた…、どうしよう…』
妙に深刻で、父も今さら電話なんか!!…と怒鳴ろうとしたらしいが、さすがに口をつぐんだ。
『……何だ…?』
素っ気なく返す父に、本当の母は震えた声で話を続ける。
『……………赤ちゃん……できてるみたい……』
『は?なんでわざわざ俺に報告してんだよ。別に俺は関係ねぇじゃんか。』
単なるノロケか、そう思い電話を切ろうとした…
『違うの!!……違う…。あなたとの……子なの………』