【仮】首輪を,キミに。

あたしが拉致された後に透は何かされたはずだ。

だってあたしが最後に見たのは笑っている透であって,襲われている透ではないから。

透は絶対立ち向かったんだろう。

だっていつもそうだから。

でもあたしがここにいるってことは…



嫌だ。考えたくもない。

透は大丈夫だ。

でも腕一本骨折してたから…。

ああ。いやだな。

きっと今は夜なんだろうな。

だからこんな悪い考えばっかしちゃうんだ。

昔,おばあちゃんが言ってたなぁ。

《夜は悪いことしか頭に浮かばないから考え事は朝しなさい。》って。



『…寝よう』

もしかしたら,朝起きたら案外夢オチかもしれないし。

もしこれが現実だとしても,朝焼けの頃になったら透が助けてくれるかもしれない。

警察も来てくれるかな?



『透…どうか無事でいてね』



こうしてあたしは,決して快適とは言えないぬいぐるみの上で眠りについた。





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