【仮】首輪を,キミに。

『……ぅ…あぁ…だ…して』

喉が震えて声が出ない。

『だーめ。ずっとここにいなきゃ』

受け入れがたい現実を前にあたしは無力で。

『…ぇぐっ…ふ,ぇぇええんっ!ぁあああああん!ひぅ…っ』



泣き崩れた。



そんなあたしを見た透は私に駆け寄り

『泣かないで?俺,世憂姉を思ってやったことなんだよ』

場違いな優しい声がこの部屋に響いた。

あたしの泣き声と透の声は不協和音を奏でる。



『ぅわぁぁあああんっ!嫌だ嫌だやだやだやだぁ!出たいよぉ出してぇー!』

ヒステリックに泣き叫ぶあたしを見兼ねたのか。

透は

            ・・
『しょうがないなぁ。はいコレ。世憂姉の可愛い声が枯れちゃうの嫌だし,顔,むくむのも嫌だしね。』

世憂姉落ち着こう,と言って。



…プツリ

あたしのうなじ辺りに一本の注射器を射し込んだ。





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