【仮】首輪を,キミに。

『ありがと…』

ぎこちない笑みを透に向ける。

不意に,透は『よし!』と手のひらを叩き立ち上がった。

『さぁ。お腹減ってない?ご飯にしようか。あ,それともお風呂がいい?…この台詞,新婚さんっぽいね』

先程のやり取りを掻き消すかのように,重い雰囲気を祓うかのように明るい声を出す。

なんだかハスキーっぽかったはずの透の声は,あたしが【格好いい】と言った歌手の声に似ている気がした。



あたしは,無意識のうちに,透に対して疑心暗鬼を抱いてしまっているのだろうか。



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