記憶混濁*甘い痛み*2
今の、オレは……
でも……
「違う、それだけじゃない。オレは……」
友梨を、愛している。
愛している。
この想いなら、条野にも負けない位、イヤきっと…オレの方が…オレの方が愛してる。
友梨が欲しい。友梨の心が、身体が欲しい。今の偽りの関係ではなく、条野の代わりではなく、芳情院宗利として愛したい…愛されたい…なのに。
「またオマエは…条野を選ぶか…友梨…」
芳情院の瞳から溢れた涙は頬を伝い、友梨の白くて細い指に落ちた。
すると
「…おにい…さま?」
ぱちぱちと瞼が動き、友梨の瞳が、ゆっくりと開いた。
芳情院は慌てて涙を拭うと、何事もなかったかのように穏やかな微笑みを作ると。
「起こしてしまったか…悪かったね」
と、言って、友梨の手をシーツにしまい、彼女の髪を優しく撫でた。
けれど友梨は、もそもそと起き出して
「お兄様……」
と、言って、芳情院の手を引いて、スツゥールからベッドに招いた。
「お兄様…友梨が、お兄様の事を悲しくさせておりますの?」
友梨は、何故か涙を流しながら、芳情院を抱きしめた。