記憶混濁*甘い痛み*2
「…すきよ…お兄様」
「友梨…」
「お兄様が泣いたら…友梨まで悲しくなる。泣かないで…」
その、台詞は、1年程前に聞いた事がある。
彼女を追い詰めた、あの汚れた出来事の後に。
幼い(幻影の)友梨が、オレの手を取り涙を流した。
「泣かないで…?お兄様に泣かれたら…友梨は胸が苦しくて苦しくてたまらなくなる…ねえ…お兄様…」
そっと、友梨から、触れる唇。
こんなに苦しいのは…昼間のあの人の事まで思い出してしまうからかしら。
友梨は芳情院の唇に和音を重ねる自分を責めながら、それでも深く長いキスを求めて、愛しい男の背中に腕を回した……